代表 木村善一
(有)木村時計店の経営と一方では、労働省時計修理中央検定委員として技能検定業務に従事しておりました。時計を通じて人に満足感をお届けできることを幸せに思うと同時に、誇りに思っております。
資格 / 職業訓練指導員(時計課)・1級時計修理技能士
- 平成16年
- 名古屋市技能功労者表彰
- 平成5年
- 黄綬褒章受賞
- 平成2年
- 労働大臣表彰「現在の名工」
- 昭和54年
- 愛知県知事より「優秀技能者」表彰
時計のお医者さん 時計修理技能士
四十年にわたって時計のお医者さんともいえる時計修理の仕事をしています。彼は時計修理技能士1級の資格を昭和42年に取得しました。
部品の油にほこりがついて動かなくなった時計が彼のもとに持ち込まれました。この腕時計の部品はおよそ百個。そのうち半分が、大きさ五ミリ以下です。小さな部品が数多くあるため、作業には繊細な神経と集中力が要求されます。中のネジの直径はなんと0.3ミリしかありません。木村さんがミリ単位の部品と格闘すること2時間、静寂を破って、止っていた秒針が動き始めました。
「やっぱり、苦労して修理して、時計が生き返るのを見るのは自分なりに嬉しく思いますね。それをまた、お客様に使っていただいて、喜んでいただける、そのときは本当に良かったなあと思います。」
時計修理技能士1級の彼を頼って、毎日たくさんの時計が持ち込まれます。たとえば、あるレストランで長年多くの客を迎えてきたドイツ製の柱時計。修理する人がみつからず、三年間そのままにされていたものです。
この時計のこわれた部品が彼の所に運ばれてから二週間後、彼はレストランに出向き、修理した部品を取り付け、さらに、十五分ごとに鐘がなるように調整しました。
一時間後、久しぶりに柱時計の鐘の美しい音色が店内に響き渡りました。
このように、彼が他の店では直らないと言われた時計を修理できるのは、すでに在庫がなくなっている部品でも、それを自分で作ってしまう技術を持っているからです。
旋盤を使って、直径9ミリの歯車に1ミリにも満たない小さな歯を刻んでいく技。時計修理技能士1級を超えた、まさに職人芸です。
「遠くからいらしていただいて、どうしてもなんとかこれをと頼まれ、記念だとか、形見だとか、言われますと、なんとかできないかなあと思うんですよ。」
時計が息を吹き返す瞬間を見るのが最大の喜びという時計修理技能士は、その喜びを求めて、今日も時計を直し続けるのです。
~KTC中央出版 「オトナの試験 1」 文章より~